コンサルタントの代名詞の一つといえば「激務」です。
毎日終電を越えるのは当たり前、プロジェクトの大切なタイミングでは徹夜も厭わず、成果を出すことが求められるというイメージがあるコンサルティング業界。
一方で、働き方改革を掲げるコンサルティングファームも増えてきており、「激務」はすでに過去のものという話も耳にすることがあるかと思います。
今回は、コンサルティングファームは果たして今でも激務なのかというテーマについて紹介してみたいと思います。
元々コンサルティングファームはどの程度、激務だったのか?
コンサルティングファームがどの程度激務なのかという話は、枚挙にいとまがありません。
- 今月は、平日の飲み会はゼロ
- 今回のプロジェクトは、平均的な睡眠時間は3時間
- 毎日朝の3時帰宅
- Due Diligenceのプロジェクトに入って、年末年始の休みがなくなった
- 土日は基本片方出社 などなど
しかも、入社してすぐのコンサルタントだけが実力不足で長時間労働をしているというわけではなく、優秀な中堅コンサルタントもクライアントから要望に対応する中で、同様に激務になっている。
こういった話は決して嘘ではないと思います。私もコンサルティングファームで長く働く中で、このような経験をしているコンサルタントを何名も見てきました。
但し、正確に言えば、これらの話は全て断片を切り取った話であるということをまずは、知っておいて頂きたいです。
例えば、年末年始の休みが急遽プロジェクトの関係でつぶれるということは、非常に稀ですが、発生することはあります。但し、このような経験をするのは、コンサルタントスタッフの1割にも満たない特殊な事例です。また、このような経験をした場合、プロジェクトの終了後に、1週間以上の代休をもらえることも一般的です。
他にも、毎日朝の3時に帰宅するということが1年間ずっと続くことは、ありえません。
私の感覚からすると、コンサルタントによる個人差はあるものの、1年間を平均的に慣らせば、毎月の残業時間は多くても100時間には収まるのではないかと思います。
勿論、100時間というのは、一般的な事業会社からすれば間違いなく「激務」です。
激務解消に向けたアクセンチュアの働き方改革
こうした激務に対して、コンサルティングファームも放置をしているわけではありません。
例えば、アクセンチュアは、「人材こそが競争優位の源泉である」という考えの下、働き方改革を全社的な重要なアジェンダと捉えて、さまざまな解決策を打つことを謳っています。
- 経営トップ、本部長、各本部の担当者、そして各プロジェクト単位でもProject PRIDEを推進する担当者を配置し、全社を巻き込みながら風土改革を展開
- アクセンチュアが多くのクライアントに対して変革を実行してきた知見を活かし、風土改革のフレームワークに沿って実践をしています。ハード(制度)とソフト(意識)の両面から変革
具体的な施策としては、以下のような施策を推進しているようです。
方向性提示と効果測定
徹底的な数値化を行い、各種KPIを設定、PDCAサイクルを構築
残業時間や有休取得率など約10項目を見える化、定期的に経営会議で報告 等
リーダーのコミットメント
本部長が、現場のヒアリングや定量調査に基き、「定型作業のシェアードサービス化」などのプランを発表
毎月、プロジェクトと個人別労働時間の実績・予測に基づき、本部長がプロジェクトや個人に対してアクション 等
仕組み化・テクノロジー活用
18時以降の会議原則禁止
残業の適用ルールを厳格化
短日短時間制度の導入
在宅勤務制度の全社展開
生産性の高い社員により報いるための給与制度の改定 等
ここではアクセンチュアの例を挙げましたが、その他の戦略コンサルティングファームも類似の取り組みを進めることで、激務からの脱却を本気で目指しています。
結局コンサルティングファームの激務はなくなったのか?
さて、皆さんが一番気になるのは、「その結果、本当に激務は解消されてきたのか?」というポイントではないかと思います。
ここでもファームや個人ごとにバラつきはありますが、大まかな傾向としては、まず入社数年の若手については、概ね激務度合いは軽減してきているのではないかと思います。
3時まで働くことがゼロにはなってはいないかも知れませんが、プロジェクトや個人ごとのモニタリングが徹底されるようになったことで、ジュニアなメンバーを取り合えず働かせるということは、どこのコンサルティングファームでも減ってきているように感じます。
一方で、プロジェクトを率いる中堅のコンサルタントについては、どのファームも苦戦しているようです。むしろ若手メンバーを激務から解放する代償として、これまで以上に忙しくなってしまったという話も耳にします。
クライアントからは、これまで通り、もしくはこれまで以上の付加価値を求められる中で、生産性を一気に高めるということにはかなり苦労しているのが実情のようです。
但し、現状は各社トライ&エラーを繰り返している状況ですので、今後更に取り組みが進化してくる中で、中間層も含めて、よりよい働き方になっていくことだと思っています。
激務に対して不安が大きいのであれば、面接で確認する
もし、激務に対して不安があるのであれば、面接の際に遠慮せずに質問してみるのも手の一つです。そんな質問をしたら落ちるリスクが高まると思われるかもしれませんが、本当にあなたが不安なのであれば、落としてもらったほうがお互いのためだと思います。中途半端な覚悟でコンサルティングファームに転職して、激務に対して後悔することは、できれば避けてほしいと思っています。
それでも採用してくれるコンサルティングファームは、あなたのことをかなり評価している、もしくは、本当に激務から脱却しようと真剣なコンサルティングファームであり、そのような会社であれば、是非前向きに転職を考えてみると良いのではないでしょうか。