外資コンサルティング業界における働き方改革の実態を現役コンサルタントが語る

この1~2年間で業務の効率化をテーマとしたコンサルティングプロジェクトが多くなりつつあります。働き方改革を専門とした中規模のコンサルティングファームも登場してきているほどであり、この流れはしばらくは続きそうです。

 

そこで、今回は、働き方改革として、具体的にどのような支援をするのかをご紹介すると同時に、コンサルティングファームの中で働き方を改革するために行われている取り組みについて、いくつかご紹介したいと思います。

 

コンサルティングファームによる働き方改革の支援

コンサルティングファームによる働き方改革は、大きく3つの構成要素によってなりたっています。

 

  • 過剰な業務の削減
  • 業務量の均一化
  • インフラや仕組みの刷新

 

ひとつずつ説明します。

過剰な業務の削減

過剰な業務の削減にむけて、コンサルティングファームは以下のような取り組みを支援します。

  • 業界ベンチマークによる、オペレーションの効率化
  • ユーザーの声を踏まえた、基準の簡素化
  • 部門横断で見た際の無駄の発見 など

 

例えば、良くある話としては、上司の承認を取るために、資料の細かい修正を何度も繰り返すという作業を従業員が何度も行うといったことが大企業中心に未だに存在しています。そうした中で、マネージャークラスにどの様に権限を渡し、幹部がどのような指標を元にモニタリングをするのかという仕組みの導入は非常に有効に働いています。

個人の力量に任せるだけでなく、組織として適切なモニタリングの仕組みを導入することが、テクノロジーの進化により、リアルタイムかつ正確にこれまで以上にできるようになっている今だからこそ、このようなコンサルティングの価値が高まっているのです。

 

業務量の均一化

業務量の均一化にむけて、コンサルティングファームは以下のような取り組みを支援します。

 

  • テレワーク、副業などを活用した稼動の柔軟性向上
  • 高齢者や外国人労働者の効率的な活用
  • 中長期的な視点での経済性を踏まえたアウトソーシング活用 など

 

例えば、米国では、We workなどのコワーキングスペースの発展の恩恵もあり、フリーランスの方に限らず、会社員であっても、様々な場所で自由に働くことがますます一般化してきています。

Slackなどの企業向けコミュニケーションツールは日本でもかなり一般化してきていますが、今後5年~10年という時間軸で見ると、通信の5G化により、よりリアルな映像をどこからでもリアルタイムでコミュニケーションできるようになったり、VRによって、あたかもその場にいるかのように体感できるなどの技術が発展することでますます働き方の多様化は促進していくことが予想されます。

 

インフラや仕組みの刷新

インフラや仕組みの刷新に向けて、コンサルティングファームは以下のような取り組みを支援します。

 

  • 社内ベストプラクティスの共有化
  • RPAやAI、クラウドの導入
  • 報奨制度の改革 など

 

但し、このインフラや仕組みの導入は、コンサルティング案件としては、失敗につながり易いというリスクがあります。というのも、単にインフラや仕組みを導入するだけでは、結果はほとんどでず、最悪の場合、単純に導入したコストの分だけ赤字になるということが発生しえるからです。

成果をだすためには、導入する側の社員の方が、そのインフラを使う意義を真に理解していただき、自ら率先してどの様に使うのか、どのように活用知ればより効果がでるのかということを継続的に磨いていただくことが肝となってきます。

 

コンサルティングファームが実践する働き方改革

最後に、具体的にマッキンゼーやBCG、アクセンチュアなどのコンサルティングファームがどのような働き方改革を自社で実践しているのかについてご紹介していきます。

 

  • 幹部レベルによる各種KPIの設定とモニタリングの徹底
  • 18時以降の会議原則禁止
  • 最大半年間の休暇取得制度
  • 毎週プロジェクトチームによる働き方の見直し会議の実施
  • コンサルティングスタッフに対する年間100時間のトレーニング
  • 社内コミュニケーションツールの刷新
  • 生産性の高い社員により報いるための給与制度の改定
  • 働き方改善に貢献した社員に対する表彰制度 など

 

これらコンサルティングファームが実践する働き方改革に共通しているのは、単純に業務を減らそうという取り組みではなく、以下に生産性を高めるかということにフォーカスしている点です。

 

例えば、半年間の休暇取得制度にしても、取得するコンサルタントは、自分が専門とするトピックに関してより深い知見を磨くため海外のスタートアップで経験を積んだり、家族との時間をしっかりと持つことで、またコンサルティング業務に集中する精気を養うなど、意義のある休み方をされることが多いように感じます。

 

働き方改革は進んでいるがコンサルティングファームに転職するには覚悟も必要

コンサルティングファームで働く時間は、以前と比べると確実に短くなってきていますが、それでも一般の企業と比べると長時間労働であることには変わりありません。

 

いくつかの企業の面接を受けていると、うちの会社は働き方改革をしてホワイトなコンサルティングファームであるという宣伝を受けることもあるかと思いますが、もしワークライフバランスが人生において最重要視するのであれば、コンサルティングファーム以外の仕事を探すことも良いかもしれません。