戦略ファームのビジネスモデルは本当になくなるのか?

戦略ファームの将来に対して不安がる声は、年々広がっているような気がします。中途採用者の面接や説明会だけでなく、新卒採用の場においても、「戦略コンサルタルティングファームは持続可能なビジネスモデルなのでしょうか?」といった類の質問を頂くことが増えてきています。

今回は、このような戦略ファーム滅亡論に対して、実際にコンサルティングファームで働く中で感じることをお伝えしたいと思います。

 

戦略ファーム滅亡論 3つの理由

まずは、よく耳にする戦略ファームが将来的に無くなる、もしくは縮小するのではないかという3つの理由を紹介します。

 

①ポストコンサルタントの増加

最も古くから聞くのは、このポストコンサルタント増加という理由です。2005年を過ぎたあたりから、コンサルタンティングファームを退職して事業会社で活躍される方の数が増えていったことにより、もはや事業会社ではコンサルタントが不要なのではないかという論調が出るようになってきました。

 

②戦略コンサルは成果を残せていない?

書店やネットなどでも「コンサルタントに任せても成果がでない」「コンサルファームを雇って会社が潰れた」などのメッセージを目にすることはないでしょうか。これらが全て真実だとしたら、どうして戦略コンサルに将来があると言えるでしょうか。少なくとも一度雇ったことなる企業は二度と戦略コンサルを雇わないはずです。

 

③AIの普及

最後に、最近目にするようになった声として、AIの登場を挙げる方がいらっしゃいます。戦略コンサルに関わらずなのですが、AIの登場により、人が考える戦略ではなく、様々なものを試す中で、AIが最適なものを提案してくれるのだから、コンサルタントなどは必要ないじゃないかというお話です。

 

3つの理由に対する個人的な考え

それでは、これら3つの主張に対して、コンサルタントとしてどのように感じているかご紹介したいと思います。

 

①ポストコンサルタントの増加はむしろコンサルティング業界成長の要因

ポストコンサルタントが事業会社で活躍するようになったことは、戦略コンサルティングファームの視点からすると寧ろ歓迎すべきポイントだと思っています。
というのも、戦略コンサルでプロジェクトをする際に、困ることの一つとして、クライアントの方々と1つのチームとして、成果を挙げるために、信頼とやり方を共有できるかということがあります。


特に初めてコンサルティングファームを活用される方々などは、仕事の進め方や任せ方などについて、必ずしも得意とは言えず、結果としてプロジェクト全体のパフォーマンスも低下してしまうことは正直あります。


一方で、元々コンサルティングファームでご活躍されていた方々は、自分の一員として働いていたこともあり、どのようにコンサルティングファームを使えば、成果が一番上がるのかをよく理解し、お互いに気持ちよく、成果に向かって働くことができるのです。

また、そもそも、何故ポストコンサルタントの方がいる中で、外部のコンサルタントが必要なのかという点については、コストが原因といえるでしょう。大手企業といえども、常に十分な数のコンサルタントを揃えておくことは必ずしも費用対効果が高い判断とは言えず、スポットで、大きな改革を実践するのみに外部のコンサルタントを一時的に使うということが結果的に最もコストを下げることに繋がるといえます。

 

②戦略コンサルが成果を残せていないことは確かにあるけれども、、

正直な話、私が過去に関わったプロジェクトについても、全てにおいて胸を張れるだけの成果を残せたかというと、答えはNOです。残念ながら、当初想定した成果を挙げることなく終了してしまったプロジェクトは存在します。

 

他にもデロイト トーマツ グループが1,360社にアンケートした結果を纏めたレポートによると、海外M&Aの成功率はわずか37%とのことであり、この裏側に支援に関わったコンサルティングファームが数多くいるとすると、成果を残せていないということが定量的にも見えてくると思います。

 

ただ一方で、忘れてはいけないのは、成果を挙げているプロジェクトは、それらの失敗したプロジェクトを上回る数存在しているということです。甘えを言うわけではありませんが、ビジネスの世界で常に100%の成果を残すということはかなり難しいと思います。120%の成果が出ることもあれば、80%の成果しか出せないこともあります。

 

これまでのプロジェクトを振り返ると、平均すると100%以上の成果は出せていると思います。その中で、数個のプロジェクトについては、様々な原因が積み重なった結果、残念ながら70~80%程度の成果しか出せなかったというのが結論です。

 

また、100%以上の成果を挙げた会社様からは、幸いなことに、その後も別のプロジェクトのお話を頂くことが多くあるのも事実です。

 

③AIの普及については、正直分からない

最後の1つについては、正直分からないというのが率直な意見です。確かに、AIが普及・進化していくことで、今の戦略コンサルティングファームが提供しているサービスのいくつかは、事業会社が自ら行えるようになるかもしれません。一方で、AIが普及するからこそ新しく生まれるノウハウもあるはずで、ただし、それを戦略コンサルファームがやるべきなのかどうかは、不透明です。

 

いずれにせよ、戦略コンサルファームも、AIの普及・進化に伴い、自らのビジネスモデルを大きく変化させていくことは確かなのではないでしょうか。

 

結論:少なくとも5~10年のスパンで見た場合には、戦略コンサルファームは拡大

2005年以降、コンサル不要論、コンサル滅亡論は言われ続けていますが、現実はコンサル業界は毎年成長を続けています。最後に紹介したAIなどの環境変化が与える影響はあるかと思いますが、少なくとも5~10年というスパンで見た場合には、戦略コンサルは引き続き拡大していくのではないかと考えています。